物置

書いたものを置く場所です。

2016-01-01から1年間の記事一覧

一人の男の子のおはなし

あるところにごく普通な、仲のいい夫婦がいました。 二人は愛を育み、一人の子をさすがりました。 夫は喜び、子供に付ける名前を考え夜も眠れぬようで、妻は母になる瞬間を心待ちにしていました。 医師からも、何の問題もない、元気な男の子だと言われていま…

養父は狩人。 第5話 「責任」

なんてこったいつもこうだ。 悪い予感だけ、よく当たる。 《石泣村》 「村長!早くこっちに!!」 《標的》 《穢》 「ひええ!」 村長は転がるようにして倒れながら、なんとか間一髪犬神の爪から逃れ蘭化の足元へとたどり着いた。それに反応し蘭化は村長の前…

養父は狩人。 第4話 「襲来」

「おいおい、なんの騒ぎだい。」 一人の男が猟師風の男と、農家風の男に訳を訪ねた。いつも通る道の真ん中に、人だかりができていたからだ。 人だかりから少し距離を取っていた二人のうち、農家風の男が答えた。 「警察だよ」 「警察?」 「ああ。なんでもこ…

養父は狩人。 第3話 「犬神」

「ところで…今日は何を?」 田舎の無駄に広い田端を走る車内で、絢人は蘭化に問いかけた。 「狗狩りだ」 長旅の疲れを象徴したかのようなあくびを噛み殺しながら、運転手は答えた。聞きなれない単語に絢人は少し混乱する 「…ワンちゃんをですか?」 混乱を解…

養父は狩人。第2話 「はじまり」

「…え」 「フーーッぐftgshgdぼがっばうぐべgぐごおごおぐぐぐ」 広い部屋の真ん中で、女の人が椅子に鎖で無理やり縛り付けられ、狂ったように頭や手など動くところを必死に、動かしていた。なにを示しているのか?本当に意味があるのか?わからない「音」を…

養父は狩人。第1話 「あり得ない」

男は肩までかかる位のロン毛で、どこか日本人離れしている青みがかった瞳。助手席のシート背の低いくいシルクハット、袖からちらりと見えるハンドルを握る右手は包帯に包まれ、左手は黒い手袋をしていた。「あ……はい。」「乗りな。」「……」絢斗は言われるが…

養父は狩人。 第0話 「祖父の死」

お爺ちゃんが死んだ。 お調子者で、孫好きだったお爺ちゃん。 生まれてからすぐ、両親が他界した僕に精一杯の愛を注いでくれたお爺ちゃん。 訃報を聞いた時は現実味が無く、しばらく呆けていた。 二週間前、ゲートボール仲間と旅行中、事故にあって逝ってし…